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福岡高等裁判所 昭和61年(行ス)1号 決定

抗告人(申立人) 清家湛 外二六名

相手方(被申立人) 佐伯市長

主文

原決定を取り消す。

大分地方裁判所昭和六〇年(行ウ)第八号行政処分取消等請求事件の請求の趣旨第一項の被告を佐伯市長から佐伯市に変更することを許可する。

理由

一  本件抗告の趣旨及び理由

別紙即時抗告申立書記載のとおりである。

二  当裁判所の判断

1  本件記録によれば、抗告人らは、いずれも原告となり、相手方を被告として「被告佐伯市長が、佐伯都市計画事業長島土地区画整理事業(以下、本件事業という。)について、昭和五七年六月二二日原告らに対してした換地処分をいずれも取り消す。」旨の本件訴えを提起したが、本件事業は、土地区画整理法三条三項の佐伯市を施行者とする土地区画整理事業であつて、同法同条四項の佐伯市長を施行者とする土地区画整理事業ではないことが認められるから、本件訴えの被告適格を有するものは佐伯市であるといわなければならない。

そうすれば、本件訴えは被告を誤つたものということになる。

2  そこで、本件訴えにおいて被告を誤つたことが、行政事件訴訟法一五条一項にいう「故意又は重大な過失」によるものであるかどうかにつき検討する。

本件記録によれば、抗告人らに対する換地処分通知書には、本件事業の施行者として、「佐伯都市計画事業長島土地区画整理事業施行者、佐伯市代表者佐伯市長大鶴文雄」との記載があるほか、仮換地指定通知書にも大分県知事及び建設大臣作成の各裁決書にも施行者として右と同じ記載があり、更に、抗告人らが本件訴え提起の約一か月前に施行者に提出した昭和六〇年八月三〇日付及び同月三一日付各公開質問状の宛名並びに同年九月一〇日付右各公開質問状に対する施行者の回答書にも前同様の記載があることが認められる。

しかしながら、他方、本件記録によれば、本件事業について、抗告人らは、施行者を佐伯市長と記載した換地計画要望書並びに宛名を佐伯市長と記載した換地計画に対する意見書及び異議申立書を提出しており、それらは何ら訂正を促されることなくそのまま受理されていること、右換地計画要望に対する回答延期方を求めた施行者の文書には施行者を佐伯市長と記載していること、また、抗告人らが大分県知事に提出した審査請求書及び建設大臣に提出した再審査請求書には、本件換地処分の処分者を佐伯市長と記載しているのにかかわらず、なんら訂正を促されることなくそのまま受理されていること、更に、本件事業に関し施行者が作成した「長島土地区画整理事業換地計画案の所有者別の説明について(通知)」、「長島土地区画整理事業換地計画(変更)の所有者別説明通知」と題する各文書、清算金通知書、「清算金について」と題する葉書、清算金分割納付許可申請書及び権利変更届書には、いずれも施行者を「長島土地区画整理事業施行者佐伯市長池田利明」又は「佐伯都市計画事業長島土地区画整理事業施行者佐伯市長大鶴文雄」と明記していることが認められる。

以上の事実によれば、抗告人らは、本件事業に関し、その施行者が佐伯市であるか佐伯市長であるか(土地区画整理事業は市を施行者とする場合と市長を施行者とする場合がある。)を、明確に認識していなかつたのではないかと推測されるのであるが、これは、抗告人らが本件事業の施行者を佐伯市長と記載して提出した要望書、意見書、異議申立書、審査請求書及び再審査請求書に対して佐伯市、大分県知事らがなんら訂正を促すことなくそのまま受理し適切な教示を怠つたこと及び佐伯市が本件事業に関し施行者を「佐伯市」と表示したり「佐伯市長」と表示したりして抗告人らに誤解を生ぜしめるような文書を作成交付したことがその一因をなしているものと思料されるのであつて、抗告人らが本件事業の施行者を「佐伯市長」と誤認したとしても、その責任の一半は施行者側にもあり、抗告人らのみを一概に責めることはできないものというべきである。

そして、本件記録によれば、抗告人ら訴訟代理人が抗告人らから本件訴訟の委任を受けたのは、建設大臣による再審査請求棄却の裁決がなされた後であつて、抗告人ら訴訟代理人は行政不服審査手続には全く関与していないことが認められる。

ところで、行政事件訴訟法一五条一項は、行政組織機構の複雑さと出訴期間の制限から、従来往々にして原告が被告を誤る場合があつたので、かような場合にはできうる限り被告の変更を認めて、国民から権利救済の途を奪わないようにしようとする趣旨に出たものであつて、右趣旨によれば、抗告人らが、本件換地処分の処分庁を「佐伯市長」と誤つたことをもつて重大な過失があつたとするにはいささか酷であると思われるし、この点、本件訴えが法律専門家たる本件訴訟代理人によつて提起されたからといつて、前記事実関係のもとにおいては、右代理人に法律専門家たるの故をもつて重大な過失があつたとするのもやはり酷であると思われる。抗告人らには、被告とすべき者を誤つたことについて重大な過失がなかつたというべきである。

なお、本件記録によれば、原決定のあつた後である昭和六〇年一二月二四日、抗告人らと同じく本件事業に関し換地処分を受けた三葉工業有限会社及び地方卸売市場佐伯中央青果株式会社がそれぞれ原告となり、佐伯市を被告として右換地処分の取消しを求める訴えを大分地方裁判所に提起し、右訴えは同日裁判所に受理され現に係属していること、右訴えと本件訴えとは事実関係並びに処分取消事由が全く同一であることが認められる。

3  そうすれば、本件抗告は理由があるからこれを認容すべく、これと結論を異にする原決定は相当でないからこれを取り消し、主文のとおり決定する。

(裁判官 塩田駿一 鍋山健 最上侃二)

当事者目録〈省略〉

即時抗告申立書

抗告の趣旨

一 原決定を取り消す

二 大分地方裁判所昭和六〇年(行ウ)第八号事件につき、抗告人らがなした被告を佐伯市長から佐伯市に変更する旨の申立を許可する

との裁判を求める。

抗告の理由

一 抗告の理由については、抗告人らの原審における被告変更の申立書、昭和六〇年一一月二九日付「被告変更の申立に関わる疏明資料の提出について」と題する書面、同年一二月四日付上申書を各援用するほか、次の通り附加する。

二 抗告訴訟における被告適格の一般原則からいえば、地方公共団体自体は被告適格を有しないのであり、その決定を外部に表示する権限を有する機関が被告となるべきものである。

右一般原則に従えば、本件土地区画整理事業の施行者が佐伯市であるとしても、被告適格を有するのは佐伯市長である。

だとすれば本件においては、請求の趣旨において市長を施行者と表示している部分の訂正は必要であるとしても、被告自体を変更するまでの必要はないとも解されるのである。

被告「行政庁」の特定に関する地方公共団体とその代表者たる市長との関係が、右のような問題を含むものである以上、施行者が市であることが原処分上明白であるとしても、そのことから直ちに、被告の特定についてまで重過失があるとするのは不当である。

三 次の各判例に照らしても、原決定は、行訴法一五条の解釈を誤つたものというべきである。

1 横浜地裁昭和三六年七月三日判決(行裁例集一二巻七号一四九八頁)は、換地処分等無効確認請求事件において、処分庁を横浜市長とすべきであつたのに横浜市と表示した事案について、市から市長への被告の変更を許可している。市から市長への変更が許される以上、市長から市への変更も当然許されるべきである。

2 名古屋地裁昭和二五年一〇月三一日(労働民判例集一巻九号九二七頁)は、被告を「愛知県右代表者青柳秀夫」と記載してあつても、「愛知県知事青柳秀夫」を被告とする訴えと認めている。

東京高裁昭和三〇年三月二九日判決(行裁例集六巻三号六二一頁)も、訴状の被告の表示が、「特許庁右代表者特許庁長官石原武夫」と記載されていた場合について、「特許庁長官石原武夫」に対する訴えと認めている。

3 類似の事案として、東京地裁昭和三三年五月一五日判決(訟務月報四巻五号七三六頁)、大阪地裁昭和四四年五月三一日判決(訟務月報一五巻六号六九九頁)、大分地裁昭和四六年一月二〇日判決(訟務月報一七巻五号八四八頁)等がある。

四 弁護士が代理人として関与した場合についても左記のように変更を認めた先例は多い。

1 長崎地裁昭和二五年一一月二八日判決(行裁例集一巻一二号一六六九頁)は、農地委員会から県知事への変更を許可しており、「・・一般国民はもとより法律の運用にあたる専門家とも雖も往々にしてこれに不慣れのため多少の過誤をおかすことは日常あり勝ちのことである・・・」と判示している。

2 東京地裁昭和三一年六月二七日判決(行裁例集七巻六号一二九一頁)も、都道府県知事とすべきところを誤つて農林大臣にした事例について変更を認めている。

3 高松高裁昭和三七年八月三〇日判決(行裁例集一三巻八号一四六八頁)も、県教育委員会を市教育委員会と誤つた事案について、神戸地裁昭和五三年七月三日決定(行裁例集二九巻七号一二四七頁)は、財務事務所長とすべきところを県知事と誤つた事案について、各々変更を認めている。

五 右各事例と比較すれば、本件被告の特定の誤りは、地方公共団体とその長たる市長との間に存するにすぎず、その程度の誤りを重大な過失とするのは不当である。

六 よつて原決定は取り消されるべきである。

原審決定の主文及び理由

主文

本件申立を却下する。

理由

一 本件申立の趣旨

申立人らは、「大分地方裁判所昭和六〇年(行ウ)第八号行政処分取消等請求事件(以下「本件訴訟」という。)の各請求のうち、原告を申立人ら、被告を被申立人とする換地処分取消請求の被告を、被申立人から『佐伯市』に変更することを許可する。」との決定を求めた。

二 本件申立の理由

1 申立人らは、換地処分の基礎となる土地区画整理事業の施行者(以下「施行者」という。)が、「佐伯市長」であると信じて、第一回目の仮換地前に「換地計画要望書」を被申立人に提出したのに対し、被申立人は申立人らに、施行者を「佐伯市長」と明示した昭和四七年一〇月三一日付文書及び同年一一月九日付所有者別説明通知を送付しているのであり、また、申立人らが換地処分について、被申立人に対し異議申立を行つたにもかかわらず、「佐伯市」は、処分者等の表示の訂正を求めることもなく、右申立を受理し処理しているうえ、申立人らが大分県知事に対し、処分者を「佐伯市長」と明示して、換地処分の審査請求を行つたにもかかわらず、大分県知事は処分者の表示の訂正を求めることもなく、右請求を受理し、「佐伯市長」の弁明書を「佐伯市」のものとして申立人らに送付して処理しているのであり、さらに、施行者を「佐伯市長」とした昭和五九年二月七日付清算金通知書、同月二七日付「清算金について」の葉書及び清算金分割納付許可申請書の書式を申立人らに送付しているのであつて、佐伯市長、佐伯市及び大分県知事は、申立人らが施行者を「佐伯市長」と誤解していることを知りながら、注意を促すこともせず、かえつて誤解を助長するような処理さえ行つてきたのである。

以上の経緯及び本件訴訟が、初めから「佐伯市長」及び「佐伯市」を共同被告として提訴されていることに鑑みれば、本件申立は、実質的に被告の表示の訂正に過ぎず、許可されるべきである。

2 弁護士である申立人ら代理人らが、本件訴訟の提訴段階から関与しているとしても、前項の経緯から明らかなとおり、「佐伯市」自身が一連の文書において、施行者を「佐伯市」としたり、「佐伯市長」としたり、してきたのであり、また、本件訴訟が特殊な行政分野についてのもので、しかも、「市」と「市長」という微妙な区別の問題であるうえ、提訴期間の関係で本件訴訟の提訴を急いだ事情もあつて、換地処分自体の通知書を見る余裕がなく、行政不服審査関係の書類によつて、被告を定め訴状を作成せざるを得なかつたのであるから、申立人ら代理人らが行つた被告の選定に、行政事件訴訟法一五条所定の「重大な過失」があつたとはいえず、本件申立は許可されるべきである。

3 本件訴訟において、被告の変更が認められない場合、申立人らは提訴期間の徒過により永久に提訴の機会を失うのに対し、変更後の被告となる「佐伯市」は、被申立人と実質的に一体不可分の関係にあり、相互の連絡調整は十分可能であり、まして「佐伯市」は本件訴訟の当初から、共同被告とされているのであつて、被告の変更によつて予期せぬ不利益は生じないうえ、被申立人は、本件訴訟の答弁書を決められた提出期限内に提出せず、そのため申立人らは提訴期間経過により新たな提訴が行えなくなつたのであつて、被申立人の信義に反する行為により、申立人らが被る不利益を考慮すれば、被告の変更を許可すべきである。

三 当裁判所の判断

1 本件訴訟の訴状によれば、申立人ら代理人らは、申立人(原告)らの訴訟代理人として、「佐伯市長」を被告とし、申立人らが「佐伯市長」から受けた換地処分(以下「本件処分」という。)の取り消しを求めて、本件訴訟を提起したことが認められる。

ところで、本件記録によれば、「仮換地指定通知」と題する文書、「換地処分通知」と題する文書、大分県知事作成の裁決書及び建設大臣作成の裁決書には、施行者を「佐伯市代表者佐伯市長」と記載されていることが認められるから、本件訴訟において、取り消しを求める本件処分の処分者は、「佐伯市」であつて、被告適格のある者は「佐伯市長」ではなく「佐伯市」であることが明白である。

2 そこで、被告の変更を許容しうるか否かについて判断する。

(一) 申立人らは、本件訴訟において、申立人(原告)ら訴訟代理人らには、被告の選定に関して、行政事件訴訟法一五条所定の「故意又は重大な過失」がなかつた旨主張するので、その点について検討する。

前記認定のとおり、本件処分の通知書、本件処分の前提となつた仮換地指定の通知書及び本件処分の裁決書には、施行者を「佐伯市」と明示してあり、また、土地区画整理法上、行政庁が土地区画整理事業の施行者となり、換地処分を行う場合は、建設大臣が「国の利害に重大な関係がある土地区画整理事業で災害の発生その他特別な事情に因り急施を要すると認め」たときで、都道府県知事若くは市町村長に命じ又は自ら行う場合(土地区画整理法三条四項)に限定されているのであり、さらに、本件記録によれば、申立人らをも構成員とする長島土地区画整理事業清算金反対同盟が、本件訴訟の提起日の約一ケ月前に、施行者を「佐伯市」と明示した昭和六〇年八月三一日付及び同年九月一〇日付各公開質問状を作成し、佐伯市に提出していることが認められるのであつて、弁護士である申立人(原告)ら代理人らとしては、提訴にあたり、当然検討すべき書類である仮換地指定通知書、換地処分通知書、裁決書等並びに関係実定法規について些細な注意を払えば、容易に本件処分の処分者が「佐伯市」であることは判明し得たものというべく、したがつて、佐伯市長を被告として、本件処分の取消請求の訴えを提起したことは、右代理人らが法律専門家として要求される注意義務を著しく欠いたものといわざるを得ず、代理人のこのような不注意は、本人たる申立人(原告)らにもその効果が及ぶことはやむを得ないから、申立人らが被告とすべき者を誤つたことについては重大な過失があつたものといわなければならない。

なお、本件記録によれば、申立人らが施行者を「佐伯市長」と明示した換地計画要望書及び「佐伯市長」宛を明示した本件換地計画の意見書を佐伯市長に提出し、それがなんら訂正を促されることなく誤つたまま受理されていること、申立人らが大分県知事に提出した審査請求書及び建設大臣に提出した再審査請求書には、いずれも本件処分の処分者を「佐伯市長」と明示してあるにもかかわらず、なんら訂正を促されずに誤つたまま受理され、大分県知事においては、佐伯市の弁明書を佐伯市長の弁明書として申立人らに送付し裁決を下していること、佐伯市長作成の「長島土地区画整理事業換地計画案の所有者別説明について(通知)」と題する文書、「長島土地区画整理事業換地計画(変更)の所有者別説明通知」と題する文書、清算金通知書、「清算金について」と題する葉書及び清算金分割納付許可申請書用紙には、いずれも施行者を「佐伯市長」と記載してあることが認められ、佐伯市、佐伯市長、大分県知事及び建設大臣が申立人らに対し、本件処分の処分者を「佐伯市長」と誤認させるおそれのある対応の仕方をしてきたことは否定し得ないが、しかし、最も重要な本件処分の通知書には、施行者を「佐伯市」と明示してあるのであつて、右事実により弁護士である申立人ら代理人らが本件処分の処分者を誤認することなど考え難いことであつて、右代理人らの注意義務違反の程度が軽減されるとは到底いえないし、前記結論を左右するに足るものとはなし得ない。

(二) 申立人らは、本件申立が実質的には表示の訂正に過ぎないと主張するが、「佐伯市長」と「佐伯市」とは別個の人格で、前者は行政庁、後者は地方公共団体であつて判然と区別されなければならないものであり、前記説示のとおり、佐伯市、佐伯市長及び大分県知事が申立人らに対し、本件処分の処分者を「佐伯市長」と誤認させるような対応の仕方をしてきたことは否定し得ないとはいつても、そのことの故に、申立人らにおいて行政庁と地方公共団体との訴訟主体としての区別を曖昧模糊となすような事態を是認することは許されず、本件申立が実質的に表示の訂正と変わらないものとは到底なし得ないものである。

また、申立人らが本件訴訟の当初から、「佐伯市」を被告として、本件処分の違法性を原因とする損害賠償請求を求めていることは、本件訴訟の訴状から明らかであるが、本件処分の取消請求と損害賠償請求は全く別異のものであつて、各請求が一個の訴えによつて提訴され、かつ、争点を共通にすることをよりどころに表示の訂正というような安易な方法で、被告の変更が許容されるはずのものでないことは明らかである。

(三) 申立人らは、本件申立が認められない場合の申立人(原告)らの不利益と本件申立が認められた場合の処分者である佐伯市の不利益とを比較して、前者の不利益が大きく、後者の不利益が小さい旨主張するが、行政事件訴訟法一五条は、処分者の受ける結果的な不利益の有無によつて、被告変更の許否を決する基準とはしていないものと解されるのであつて、右の基準を前提とする申立人らの主張は失当である。

また、申立人らは、被申立人(被告佐伯市長)が、本件訴訟の答弁書の提出を遅延し、本件処分の取消訴訟の提訴期間を経過してから、答弁書を提出したため、新たな訴えを提起することも不可能となり、申立人らの不利益が一層拡大したのであつて、被申立人の信義に反した行為からしても、被告の変更を許容すべきだと主張するが、前記説示のとおり、申立人ら代理人らが些細な注意を払えば、被告適格を有する者を誤認するなど考えられないのであつて、被申立人(被告佐伯市長)の指摘を待つまでもなく、本件訴訟提起後においても、右注意を払い、新訴の提起を行うなどしていれば、申立人らが提訴期間の経過により、永久に提訴の機会を失うという最悪の事態を避け得たのであり、自らの右注意不足を措いて、被申立人を批難することは、本末を誤る恐れのある主張というべきで、本件申立の許否を決するうえで、考慮するにあたいしないものというべきである。

したがつて、申立人らは重大な過失により、被告とすべき者を誤つたものであり、かつ、申立人ら主張のその他の事由も、本件申立の許否を決するにつき、その判断を左右するに足りるようなものでないから、本件申立は理由がないものといわざるを得ない。

四 よつて、本件申立は理由がないものとして、これを却下することとし、主文のとおり決定する。

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